相続の調停・審判

 相続遺産は分けることのできる財産を除き、遺産分割されるまでは

共同相続人の共有財産となります。

相続人の間で分割が合意できない場合、

家庭裁判所に対して分割を請求することができます。

家庭裁判所に対して、非公開の調停の申立て、

あるいは審判の申立てをすことができます。

ただし、遺産の分割は相続人の協議で決定されることが

相応しいとの見地より、審判の申立てをしても、

一般的には強制的に調停となります。

また、相続人や遺産の範囲のような相続の前提に

対して争いが有る場合、多くは訴訟で確定されます。

そして調停でも合意に至らない場合は、

自動的に審判手続きに移行されます。

また、この審判に対しても不服がある場合は、

即時抗告をすることもできます。

全国で1年間に約15,000件の調停、

約2,000件の審判が起きたそうです。

調停では双方の主張を確認しながら、妥協できる点を見出しますが、

審判では法律に照らしての判断になりますので、

調停とは大きく異なります。

特別受益などに対する主張がある場合は、

その事実を証明できるような証拠の収集も必用となります。

 

 調停が合意に至った場合は、家庭裁判所が調停証書を作成し、

裁判の判決と同等の効力がありますので、

不動産の名義変更等の手続きに、遺産分割協議書や相続関係説明図、

相続人確定のための戸籍類は必要なくなります。

 

 一般的に、調停には1年程度の期間を要することが多いようで、

時には10回近く裁判所に足を運ぶこともあるようです。

遺産分割は、感情や思い込み、慣習等に左右されることなく、

最終的には、法律に則って決定されることに留意しましょう。

 

また、時折、大田区の家庭裁判所を所在を教えて

ほしいとの問合せがありますが、大田区役所は

行政機関ですので、大田区には家庭裁判所は

ございません。

東京都の場合は、霞ヶ関、立川支部、伊豆大島出張所、

八丈島出張所となりますので、

大田区の管轄は霞ヶ関となります。

 

 以前は家庭裁判所の調停で終結することが多かった

のですが、近年は訴訟へとエスカレートする

ケースが増加しているようです。

相続争いが少しでも予見できる場合、

やはり信託を利用したり、遺言書を作成しておくことが、

最も確実な回避策といえます。

財産の保全

相続財産に保全が必要な場合、家庭裁判所に対して保全の

申立てができます。

ただし、相続人や利害関係者で協議中の場合や、

調停の申立てを行っている場合は、

保全の申立てはできません。

あくまで審判の申立てがあって初めて保全の申立てが

受理されます。

また、審判が確定する前でも告知することで、

その効力が発せられます。

具体的には、財産管理者の選任、及び財産の管理、

仮差押え、仮処分等、必要な処分が下されます。

 また、調停前であっても、遺産が勝手に処分されたりする

恐れが大いに有る場合には、調停委員会が調停が

決定するまで、仮の遺産の保全を命令することができます。

ただし、家庭裁判所が職権で行うことはできませんので、

必ず相続人や利害関係者が自ら申立てをする

必要があります。

相続人が行方不明の場合

 相続人が行方不明で、遺産分割協議もできず、

生命保険金の請求や預貯金の引出し、

不動産の名義変更が困難な場合があります。

 このような場合は、「失踪宣告」を行うことで、

法的に死亡したとの同様の効果を発生させる

ことができます。

家出等で不在者の生死が判らない場合は

「普通失踪」とされ、7年後に死亡と認定されます。

一方、災害等で行方不明となり、死亡の確率が高い

とされる場合は「特別失踪」とされ、1年経過後に、

危機がなくなった時点で死亡とされます。

その他、大災害等で死亡の確率が非常に高い場合は、

官公庁による「認定死亡」という制度があります。

陳述書や寺院による埋葬証明書等の

「死亡の事実を証すべき書面」を添付して

死亡を認定します。

 

公平性の重視

被相続人より生前に受けた贈与等の利益は、

特別受益として、一旦、相続財産に算入してから遺産分割を行いますが、

従来の判例では、「預金は法定相続割合の通り、自動的に配分するもの」

として、遺産分割することなく、平等に配分するとしてきました。

しかしながら、この度、最高裁は、遺産分割に関して、

「できるかぎり幅広い財産を対象とするのが望ましい」とし、

過去に実施された贈与と、相続発生時の預金を合算し、

総合的な公平性を重視しました。

大学の授業料、結婚資金、家購入の頭金、車の購入費等、

生前の贈与と判断され、相続での調整が必要となるかもしれません。

争いを回避するには、全予定相続人に対して生前より公平に

対応することが重要です。

相続財産に不動産がある場合は、「居住権」などの主張も考えられ、

分割がより困難になりかねません。

裁判となれば、家族・親族関係は完全に崩壊してしまいます。

現実的には全員に対し、完全に公平に対処することは

非常に困難ですので、多少でも争いが予想される場合は、

公正証書遺言を作成し、遺言執行者を利害関係の無い第三者とする

のもよいと考えます。

 

一部の相続人だけでの遺産分割協議

 遺産分割協議は相続人全員で行うのが原則であり、

一部の相続人のみで遺産を分割した協議は無効となります。

一部の相続人を無視して協議したような場合や、

新たな相続人が見つかったような場合は、

遺産分割協議書を新たに作成する必要があります。

一部の相続人の持分において協議が有効となるわけではありません。

また、新たな協議書の作成を拒否されたような場合は、

当初の分割協議の無効を訴えることとなります。

すでに不動産の所有権移転登記が完了している場合は、

抹消登記の申請を行い、

預貯金が払い戻されている場合は、返還請求を行うこととなります。

 相続人が、被相続人に隠し子が居たような場合や、

被相続人が遺言で認知をしていたような場合は注意が必要です。

当初の分割協議により、不動産を第三者に売却してしまったような場合は、

第三者の権利が保護されますので取り戻すことは困難となります。

 

 

債務の相続

 被相続人が金融機関等に対して債務がある場合、

負の遺産ですので、当然に他の資産から控除します。

預金がある場合は「預金残高証明書」があるように、

借入金では「借入金残高証明書」がありますので、

金融機関に発行してもらい、相続財産から差引きます。

被相続人が商売等をしていた場合は、

取引先からの請求書を調べて、未払金があれば

相続財産より差し引き、売掛金があれば加算します。

また、不動産を所有している場合は、登記簿に抵当権が設定されていれば、

債権者と債権額を調査することができます。

プラスの遺産と債務の金額が判明しなければ、

相続するべきか、相続放棄するべきか、あるいは限定承認すべきかの

判断がつきませんので、多額の債務がありそうな場合は、

速やかに資産、債務の調査を開始しなければなりません。

「49日の法要が済むまでは相続手続きに着手しない」などと

言っている余裕はありませんので注意してください。

相続人に被後見人がいる場合

 親族が成年被後見人となっていると、

相続が発生した時に、成年後見人と成年被後見人の両方が

相続人になる場合が多くあります。

このような場合は、後見人が被後見人に分からないように、

自分に有利な遺産分割を行う恐れがありますので、

後見人と被後見人の利益が背反します。

このような場合は、家庭裁判所に対して、

被後見人の特別代理人を選任してもらう必要があります。

そして、選任された後に、被後見人を代理して

遺産分割協議書に署名します。

また、成年後見人が一旦相続放棄をし、

その後に成年被後見人の代理として相続放棄した場合や、

両者が同時に相続放棄した場合は、双方の利益が相反しませんので、

特別代理人の選任は必要ありません。

及び、後見監督人が既に選任されている場合も後見監督人が

成年被後見人を代理しますので、特別代理人は不要となります。

 相続人が親と未成年者の子供といった場合にも、

同様に特別代理人が必要となります。

特別代理人を家庭裁判所に選任してもらうには、

次の書類が必要となります。

審判の申立書

成年被後見人の戸籍謄本

成年後見人の戸籍謄本

特別代理人の候補者の住民票

遺産分割協議書案

 

預貯金は遺産分割の対象

 預貯金が遺産分割の対象になるかどうかは、

永年にわたり議論されてきました。

「遺産分割の対象」とは、相続人全員での遺産分割の合意が

必要ということです。

逆に言えば、「遺産分割の対象外」とすれば、相続人全員の合意なく、

各相続人が自分の相続分を払い戻せるということです。

 従来、預貯金は遺産分割の対象ではないとされてきたため、

相続人全員の合意を得なくても、各相続人が自分自身の

相続分を引き出すことが法的には認められてきました。

ところが、多くの金融機関は、相続の争いに巻き込まれるのを恐れ、

相続人全員の合意がなければ、引出しに応じませんでした。

 このように法律の解釈と、現実の対処が異なっていたため、

最高裁の大法廷は、平成28年12月に過去の判例を変更し、

預貯金は「遺産分割の対象」とし、

これ以降は、地方裁判所、及び高等裁判所で払戻しを認めていた

係争中の訴えを破棄しました。

これにより、預貯金の払戻しには、法的にも、また実務上でも

相続人全員の同意が必要となりました。

 

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