相続貯金・預金の払戻し

 最高裁の判決により、預貯金は遺産分割の対象となり、

法定相続分を各相続人が自由に引出すことができなくなりました。

しかしながら、多くの金融機関では、預貯金の引出しには、

相続人全員の同意を要求されていましたので、実務上は

変更がありません。

 

 払戻しの手続きは金融機関で親切に教えてくれますが、

多くの書類に記入したり、何度も金融機関に足を運んだりと、

かなりの労力が必要な場合もあります。

当初はご自身で対応したものの、途中で我々行政書士等の

専門家に依頼される方もいらっしゃいます。

 

 金融機関としては本当に相続人間で合意ができているのか確認

しなければならないため、遺産分割協議書、戸籍謄本等、印鑑証明書、

実印、相続関係の判る書類等を請求します。

 郵貯銀行は「相続確認表」という書類を最初に提出し、

その後、各人の状況に応じた必要書類一覧表、貯金等相続手続請求書が

貯金事務センターより送付されてきますので、

それに応じた必要書類を揃え、請求書に必要事項を記載して

再度提出します。

ゆうちょ銀行は原則として最初に手続きに行った郵便局が取扱店と

なりますので、最初に郵便局に行かれる前に十分に検討されることを

お勧めいたします。

 

みずほ銀行では、「相続関係届書」、

三井住友銀行では、「相続に関する依頼書」

りそな銀行では、「相続手続依頼書」

三菱東京UFJ銀行では、「相続届」

といった書類の提出が必要となります。

遺産分割協議書が有る場合でも、各行の専用の書類に

相続人全員の実印を要求する金融機関もありますので、

相続人が複数いらっしゃる場合は、遺産分割協議と一緒に署名、捺印を

もらっておけば、何度も書類のやり取りをしなくても済みます。

また、遺言書の有無により提出書類が異なる場合が

ありますので注意が必用です。

および、自筆遺言書の場合は、家庭裁判所の検認証明の

提出を求められますので、遺言書は開封せずに、

検認の申立てを行ってください。

 

  昔は被相続人の預金を引き出すのに、

これほどの労力を費やすことも少なかったようですが、

最近は相続争いが増加傾向にあるため、

金融機関としてもこのようなトラブルに巻き込まれたくないため、

非常に慎重に対応しているように思われます。

 

 尚、専門家に作成依頼した遺産分割協議書、相続関係説明図等は、

預貯金の払戻しだけではなく、不動産の登記等にも使用することが

できますので、時間に余裕の無い方は、行政書士等の相続の専門家に

作成依頼されるのも相続手続きの一つの選択肢です。

 

 尚、郵貯銀行の印鑑証明の有効期限は2010年4月より3か月以内から、

6か月以内に改定されましたが、銀行によってはみずほ銀行のように、

3か月以内と規定されていますので、印鑑証明取得日には注意してください。

 

 過去の経緯を辿ると、一昔前までは被相続相続人の預金口座の確認、

及び法定相続分の払戻しであれ、相続人全員の合意が無かった場合、

多くの銀行は請求を拒否してきました。

その後、平成21年の最高裁の判決により、

相続人は他の相続人の同意なく、これを請求する

ことができると確定しました。

つまり、各相続人は単独で預金の調査も請求できますし、

場合によっては、各自の法定相続分の預金を

引き出すことも法的には可能となりました。

ただし、銀行によっては紛争に巻き込まれないよう、

手続きを厳格化し、単独での引出しを容認しませんでした。

 

 このように、判決と実務が異なることから、

冒頭に記載した通り、最高裁大法廷は、平成28年12月19日に、

預貯金も遺産分割の対象にする旨、判例変更をしました。

この変更により、葬儀費用、生活費等、一定の金額までは

個別の引出しに応じていた銀行も、相続人全員の同意がなければ、

引出しに応じなくなる可能性が高くなりました。

最高裁の補足意見では、簡易手続で銀行への仮払いを

申し立てる保全処分の活用を挙げていますが、

どの程度「簡易」であるかは明示されていません。

 

城南信用金庫の相続手続き

被相続人の預金を引出したり、相続人に名義変更する場合は、

各銀行により提出書類が異なります。

弊所のある大田区に多くの支店を構える城南信用金庫では、

次のような書類を提出する必要があります。

相続人のご確認(相続関係説明図)

相続取扱依頼書兼同意書

相続預金・積金払戻請求書

被相続人の戸籍・除籍・原戸籍謄本

相続人全員の戸籍謄本

預金の支払いを受ける方の実印

通帳・証書・キャッシュカード・出資証券等

遺産分割協議書(遺言書が無い場合)

公正証書遺言、あるいは自筆遺言書

(遺言書が有る場合、公正証書遺言は受遺者の

印鑑証明書、自筆遺言書では検認調書謄本が必要です。)

その他、審判、調停がなされている場合、

確定証明書、調停調書が必要となります。

 

以前は各支店での事務処理でしたが、現在では相続センターで

一括処理されます。

詳しくは各支店にお問合せください。

 

貸金庫の開扉

 貸金庫は賃貸契約ですので、権利義務は相続の対象になります。

貸金庫の契約者が亡くなると、その権利義務は相続人全員の

共有となり、開扉するには相続人全員で行う必要があります。

また、貸金庫の開扉請求権は相続財産ですが、遺言執行者の

開扉請求権の有無が問題となります。

このような状況を明確にするため、多くの公正証書遺言では、

遺言執行者に貸金庫開扉請求権を付与することを明記しています。

自筆遺言を作成される場合にも、貸金庫の開扉請求権を

誰に付与するかを明記されることをお勧めいたします。

 現実的には、貸金庫の契約は契約者の死亡で解約され、

多くの場合、相続人の開扉請求に貸金庫契約の解約も含まれ、

相続人が継続して使用できるかどうかは銀行の判断によります。

 及び、相続財産が確定できない場合や、貸金庫に何が入っているのか

判らないような場合は、相続人全員による開扉請求が必要ですが、

相続人等の一人が合鍵を持ているような場合は、

単独で開扉できてしまいますので、

銀行への死亡届を速やかに行う必要があります。

 

銀行口座の整理

 相続した複数の金融機関にある預貯金を払い戻すために、

戸籍や印鑑登録証明が何通取得するかが迷うところです。

最近では多くの銀行で相続センターのような専門部署を創設し、

一括管理を行っています。

しかしながら、一部の都市銀行のように、相続センターの担当者と

直接テレビ電話で協議ができる場合を除き、

一旦は各支店で判断が下されます。

その判断に不服がある場合は、各支店の担当者を仲介して

相続センターの担当者と間接的に交渉することとなりますので、

簡単に事は済みません。

必要書類に関しては、書類を支店の担当者が原本を確認して

コピーを撮り、その場で原本を返却してもらえる銀行もあれば、

原本を一旦相続センターに全て送付し、

手続き完了後に原本を返却という銀行もあります。

また、同一銀行であっても、支店の担当者によって微妙に手続きが異なる

場合もあります。

銀行にはそれぞれの事情や方針があるのでしょうから、

手続き方法を統一するのは困難なのかもしれません。

やはり、最も効果的な手段は、相続が発生する可能性が高まった時に、

不要な銀行口座を解約し、口座を集約しておくことかもしれません。

昔は現代と違い、口座開設は制限されることなく、同一支店でも

複数開設できましたので、高齢者は多くの銀行口座を有しているようです。

早めの銀行口座の整理も相続対策だと思います。

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