民法が大改正された中、相続法においても大きな改正が法務大臣の
諮問機関で議論された結果、下記通り決定されました。
【配偶者の法定相続分の引上げ】⇒見送られました。
現在の相続法では、配偶者の法定相続分は1/2で固定であり、
婚姻期間が1日であろうと、50年であろうと、相続割合に差は全くありません。
これを、婚姻期間が20年〜30年と、長期な場合には、
1/2から、2/3に引き上げるというものです。
相続時の妻の高齢化により、妻の生活を保護することがその趣旨のようです。
(配偶者の法定相続分は、1980年に1/3から1/2に引き上げられました。)
【所有財産が増加した場合の分割】⇒見送られました。
結婚後に所有財産が一定以上増加した場合、その割合に応じて、
配偶者の分割割合を増やすという案です。
【妻に居住権を付与する】⇒制定されました。
夫が遺言等で自宅を第三者に遺贈したり、親族に贈与したような場合、
妻は自宅に住み続けることができなくなるため、
妻に居住権を認めるというものです。
ヨーロッパの一部の国では、夫の死後に妻が自宅から追い出される事例が
多発して、大きな社会問題となったため、既にこの居住権を制定しています。
【寄与分の認定】⇒ 制定されました。
例えば、妻がどんなに義理の親の介護や看護を行っても、
遺言でもない限り、金銭を受領する権利はありません。
そのような人のために、相続人に対して金銭の請求権を付与するというものです。
海外には、このような権利を広く認めている国もあります。
【自筆証書遺言の形式緩和】⇒制定されました
現在の法律では、自筆遺言は全て自筆しなければなりません。
よく有効性が問題になる例としては、相続させたい銀行預金の
口座番号が誤っていたとか、不動産の登記地番を、誤って住所で
書いてしまったなどです。
これらの財産目録をパソコンで作成しても有効とするものです。
海外には、録音、録画の遺言を認めている国もあります。
これらの改正は、高齢となった配偶者の保護や、不公平感の是正といった
評価すべき試案であるものの、抽象的な権利付与が相続の争いを
助長しかねないとの意見もあるようです。
法務省では、今後数カ月間に意見公募を実施するとのことです。
【上場株式評価の見直し】⇒見送られました。
上場株式の相続税の評価を90%に引き下げる金融庁の要望は、
死亡直前に株式を購入して租税回避をすることが可能となるとの
財務省の指摘により、2017年度の税制改正では見送られました。
一方で、上場株式の物納の順位を繰り上げて、株価が相続時に比べて
物納時に下落しても、相続時の時価で評価できるようにするようです。